私の死後、ペットはどうなる?~ペットのための遺言書の書き方~

皆さんは、犬や猫などのペットを飼っていますか?
最近では、ペットを家族の一員として迎え入れ、一緒に生活している方も多いのではないでしょうか。
私が小学生の頃は、クラスでペットを飼っている友達はそれほど多くなかったように記憶しています。しかし、最近ではペットを飼っているご家庭も身近に感じられるようになりました。
ペットは、日々の生活に癒やしや喜びを与えてくれる、かけがえのない家族の一員です。

しかし、ここで一つ考えていただきたいことがあります。
「もし、自分がペットより先に亡くなってしまったら、この子はどうなるのだろう?」


今回は、そんな大切なペットの将来に備えるための「遺言書」について解説します。

1.法律上、ペットは「物」として扱われる?

家族同然のペットですが、日本の法律ではどのように扱われているのでしょうか。
実は、民法上、ペットは原則として「動産」、つまり法律上の財産として扱われます(民法第86条第2項)。
もちろん、動物は命ある存在であり、動物愛護管理法によって適切な飼育や保護についても定められています。
しかし、相続に関しては、犬や猫などのペットも預貯金や不動産などと同様に、飼い主の相続財産となります。


そのため、ペット自身を相続人にしたり、ペットに直接財産を相続させたりすることはできません。
例えば、「愛犬のサバに預貯金500万円を相続させる」という遺言書を作成しても、その内容を実現することはできないのです。

2.飼い主が亡くなった後、ペットはどうなる?

飼い主が亡くなった場合、ペットも相続財産として相続の対象となります。
例えば、配偶者や子どもなどの相続人がいる場合には、相続人がペットを引き取り、引き続き飼育することが考えられます。


しかし、必ずしも相続人がペットを引き取ってくれるとは限りません。
相続人が遠方に住んでいたり、ペットを飼育できない住宅に住んでいたり、動物アレルギーがあったりすることも考えられます。
また、最近では「おひとりさま」と呼ばれる、一人暮らしの方もいらっしゃいます。
一人暮らしであっても、兄弟姉妹などが相続人になる場合はありますが、身近にペットの世話を頼める人がいないケースもあるでしょう。
さらに、法律上の相続人が誰もいない場合には、ペットの引取先を確保することが一層難しくなる可能性があります。


大切なペットが飼い主の死後に行き場を失わないためには、元気なうちから準備しておくことが重要です。

3.ペットの将来を守るための4つの方法

飼い主の死後、ペットが安心して生活できるようにするためには、主に次のような方法が考えられます。

① 遺言書を作成する
遺言書によって、ペットを誰に引き継いでもらうかを指定する方法です。飼育費用として財産を残すこともできます。

② 死因贈与契約を締結する
ペットを引き取ってくれる方と生前に契約を締結し、飼い主の死亡によってペットや飼育費用を贈与する方法です。

③ 死後事務委任契約を締結する
信頼できる方に、死亡後のペットの保護や引取先への引渡しなどを委任する方法です。

④ 信託契約を締結する
ペットの飼育費用となる財産を信頼できる方などに託し、あらかじめ定めた目的に従って管理・使用してもらう方法です。

それぞれにメリットや注意点がありますが、今回は「遺言書」を利用した方法について解説します。

4.遺言書でペットの引取先を決める方法

遺言書を利用する場合、ペットの引取先が相続人なのか、それ以外の第三者なのかによって、記載方法が異なります。

① 相続人にペットを引き継いでもらう場合
例えば、長女に愛犬を引き継いでもらいたい場合には、次のような遺言書が考えられます。

【遺言書の記載例】
遺言者は、次の犬を長女・甲に相続させる。
犬種:ボーダーコリー
性別:オス
名前:サバ
【付言事項】
長女・甲が、愛犬サバのことを、これまで遺言者が可愛がってきたのと同様に、家族の一員として大切に育ててくれることを切に望みます。

このように、ペットを引き継ぐ相続人を遺言書で指定することができます。
また、「付言事項」と呼ばれる部分に、ペットへの思いや、引き継いでくれる方へのお願いを記載することもできます。
ただし、付言事項には原則として法的な拘束力がありません。
そのため、付言事項に「大切に育ててほしい」と記載しても、それだけで相続人に飼育義務を負わせることはできません。

飼育義務を法的に負わせたい場合は、負担付相続として遺言書をつくるとよいでしょう。
(例)
1.長女・甲に対して次の預貯金及び犬を相続させる。
(省略)
2.長女・甲は、上記財産を相続する負担として、愛犬サバを引き取り、その生涯にわたって適切に飼育するものとする。

② 第三者にペットを引き継いでもらう場合

それでは、相続人以外の友人や知人にペットを引き取ってもらいたい場合はどうでしょうか。
この場合には、「遺贈」という方法を利用できます。

例えば、愛犬を引き取ってくれる友人に、飼育費用として300万円を遺贈する場合には、次のような遺言書が考えられます。

【負担付遺贈の記載例】
遺言者は、甲(生年月日・住所)に対し、遺言者が所有する愛犬サバ及び金300万円を遺贈する。
ただし、甲は、上記遺贈を受ける負担として、愛犬サバを引き取り、その生涯にわたって適切に飼育するものとする。

このように、財産を遺贈する代わりに、一定の義務を負担してもらうことができます。

遺贈する財産の額は、ペットの年齢や健康状態、今後必要となる飼育費用なども考慮して検討する必要があります。

5.遺言書を作成する際の注意点

ここまで遺言書による方法を紹介しましたが、遺言書さえ作成しておけば必ず安心というわけではありません。
特に、次の点に注意する必要があります。

① 引取予定者には事前に相談しておく
遺言書にペットの引取先を記載しても、相手が必ず引き取ってくれるとは限りません。
例えば、負担付遺贈の場合、受遺者は遺贈を放棄することができます。
また、相続人であっても、負担を望まなかったり、相続放棄をしたりする可能性があります。
そのため、遺言書を作成する前に、相続人・第三者を問わず、引取予定者に自分の意思を伝え、了承を得ておくことが重要です。
できれば、ペットと面識があり、性格や生活習慣を理解している方が望ましいでしょう。
また、引き取ってくれる方の経済的な負担にも配慮し、飼育費用として一定の財産を残しておくことも検討してください。

② 遺言執行者を指定しておく
遺言書を作成する際には、「遺言執行者」を指定することも検討しましょう。
遺言執行者とは、遺言書の内容を実現するために必要な手続きを行う人のことです。
例えば、ペットの引取予定者とは別の信頼できる方を遺言執行者に指定し、遺言に基づくペットの引継ぎを円滑に進めてもらうことが考えられます。

③ 遺言書を発見してもらえるようにしておく
せっかく遺言書を作成しても、亡くなった後に誰もその存在を知らなければ、ペットの引継ぎが遅れてしまう可能性があります。
そのため、引取予定者や遺言執行者に、遺言書の存在を事前に伝えておくことをお勧めします。

④ 死亡直後のペットの保護も考えておく
特に、一人暮らしの方に注意していただきたいのが、飼い主が亡くなってからペットが引き取られるまでの期間です。
例えば、自宅で亡くなった場合、発見されるまで数日かかる可能性もあります。
その間、ペットが食事や水を与えられずに過ごすことになれば、命に関わる危険もあります。
遺言書だけでは、こうした死亡直後の問題に十分対応できないことがあります。
そのため、定期的な安否確認や、緊急時にペットの世話を頼める人を決めておくことも重要です。
必要に応じて、死後事務委任契約や見守り契約などを併用することも考えられます。

6.まとめ|大切なペットのために、今できる準備を

ペットは法律上、相続財産として扱われます。
しかし、飼い主にとっては、単なる財産ではなく、かけがえのない家族の一員ではないでしょうか。
だからこそ、自分が亡くなった後も安心して暮らしてほしいと願うのは、自然なことだと思います。
遺言書を活用すれば、ペットの引取先を指定したり、飼育費用として財産を残したりすることができます。
もっとも、遺言書だけですべての問題を解決できるわけではありません。
大切なのは、ペットを引き取ってくれる方と事前に話し合い、その方が無理なく飼育を続けられるように準備しておくことです。
ご自身の将来に備えることは、大切なペットの将来を守ることにもつながります。
この機会に、一度考えてみてはいかがでしょうか。

※本記事は2026年10月時点の法令に基づく一般的な解説です。個別の事情によって最適な方法は異なります。

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